芦屋先生はすぐに「吉澤さん」と呼び止めてきた。


「昨日のことは、俺が勝手にやったことだから。それだけは忘れないで」


きっと徳山先生に言われたことを気にしているのだろう。


自分を責め続けるなんて言われたら、それは確かに芦屋先生を困らせてしまう。


だから私はこれ以上先生を困らせないように、うなずくことにした。


「私、昨日は本当に嬉しかったです。先生にすごく助けてもらいました。ありがとうございました」


それだけ言って、あとは先生の顔は見ずに背を向けて足早に廊下を歩いた。


もう、芦屋先生は私を呼び止めたりはしなかった。