切ない思いに駆られてその場を離れようと、身を翻したその時。
誰かにぶつかった。
びっくりしたと同時に体が倒れそうになる。
すぐにそのぶつかった人が私の右腕を支えてくれたので倒れずに済んだ。
「すみませ……」
謝ろうと顔を上げた瞬間、私は目を丸くした。
ぶつかったのは徳山先生だったのだ。
先生は私を見て、
「立ち聞き?」
と聞いてきた。
もしかして、私がずっとここで芦屋先生たちの会話を聞いていたのを見ていたのだろうか。
全身から血の気が引くのが分かった。
「あ、あの……私……」
言葉が続かず、言い訳すらも出てこない。
「ちょっと来てください」
徳山先生は私の怪我に気づいているのか袴が入っている袋を持って、手招きした。



