「じゃあ、俺は部活に戻る」
真司は私に「気をつけて帰れよ」と声をかけて、走って教室を出ていってしまった。
私はその場でしばらく立ち尽くした。
真司のことが頭から離れなかったけれど、私には行くべきところがあったのでノロノロと歩いて教室をあとにする。
弓道部へ怪我の診断結果を報告しなくては。
本当はこのあと芦屋先生に会いたいと思っていたけれど、真司の思わぬ話があったせいでなんとなく行くのをやめることした。
菊ちゃんに相談したいところだったけれど、彼女だって大事な試合を目前に控えている。
すべて終わってから話すことにした。
そういえば、前に菊ちゃんが言っていた。
「真司は萩のこと絶対好きだもんね」
菊ちゃんは真司の気持ちに気づいてたということ?
私なんていつもからかわれてばかりで、バカにされていたから、そんなこと思いもしなかった。



