程なくして保健室に到着した。
彼が先ほどの鍵を使ってドアの鍵を開ける。
保健室の中は微かにツーンとした消毒液の匂いがした。
「えーっと、湿布貼ればいいのかな?」
すぐに彼は私が冷やしている左手首を見てから、保健室の棚をガサガサ探し始める。
「先生、違うよ」
私は湿布薬のしまってある場所を知っていたので、彼が探している棚とは別の引き出しを開けて湿布薬が入っている袋を取り出した。
「さすがだね」
「よく怪我してここにはお世話になってるから」
感心する彼に私は苦笑いを向けて、湿布を1枚出して袋を元の場所にしまった。
「ここに座って」
いつの間にか彼は回転イスに腰かけており、向かいに置いてあるイスに座るよう促してきた。
言われた通りにそこに座る。
自然な動作で私の手から湿布薬を取ると、
「手首出してごらん」
と微笑んだ。