私は昨日の夜、芦屋先生に家まで車で送ってもらったことは誰にも言わないつもりだった。


菊ちゃんにも言わないと決めていた。


隠すとかそういうことではなく、自分だけの幸せな時間として心の中にしまい込みたかったからだ。





放課後になり、帰宅部のクラスメイトに混ざって帰る準備をする。


これから2ヶ月も部活に参加出来ないなんて自分でも信じられないことだったけれど、とりあえず今は治療に専念して早く治すことにした。


クラスメイトのほとんどが帰ってから移動するようにしよう。
歩くの遅いし、今の時間帯は階段や廊下などが混み合っているからだ。


弓道部のみんなに報告に行く前に、ひと休みと思って窓からグランドを見下ろす。


芦屋先生は何をしているかな。
昨日のこともあったし、怪我の診断結果を先生に伝えに行こうかな。


でも本当はそれは言い訳で、先生に会いたいだけなのだ。