「いい子ちゃんしてると、どんどん疲れてくるよ?もしも芦屋先生に彼女がいたりしたら平気でいられる?ちょっと話せるだけで本当に満足なの?」


澪は私のペースを乱すような言葉をいくつも浴びせてきた。


何も言い返せない私から、彼女はまったく目をそらさなかった。


「このままボーッとしてるといつの間にか卒業する時が来ちゃうんだよ。先生は学校にずっといるけど、私たちはいずれ卒業していなくなるの。そう考えたら、同級生でも先輩でも先生でも、好きになったらみんな一緒じゃない?」


澪の考え方は間違ってはいないかもしれない。
でも、正しいとも思えなかった。


ただ1つ言えることは、芦屋先生と話せなくなったり冷たくされることだけは嫌だということ。


だからこのままでいいと思っているのだ。


「私には分からない……」


首を振って澪の言葉をかき消すようにつぶやく。


彼女は一瞬、眉を寄せて納得のいかないような表情をしたけれど、


「そのうち分かるよ、絶対」


と言った。