意地悪な先輩〜バレー部の二人の王子〜

「先輩、顔近いです。離れてください」

「嫌なのか?」

「また噂になるのは嫌です」

「ああ。昨日、誰かに見られてたらしいな?」

「先輩もそれを知ってるなら、これからは気を付けてください」

「何を?」

「私に近付かないでください」

「なぜ?」

「また噂になるからです。さっき言いましたよね?」

「噂になるのは嫌なのか?」

「嫌です」

「相手が俺だから嫌なのか?」

「それは……その通りです」

その理由は、水嶋先輩を好きな加奈ちゃんに悪いからと、また上級生に絡まれたら面倒だから、なんだけど、どっちも水嶋先輩には言いたくなかった。

『なぜ?』と聞かれたら何て答えようかと考えていたら、『分かった』と言って、先輩は私から離れた。

先輩と開いた空間を、隙間風が吹いた気がした。