意地悪な先輩〜バレー部の二人の王子〜

ましてや控えのセッターに教えてくれる人はいない。だから自分で考え、技術を磨くしかない。

「練習試合まで日がないのに、可哀相だなと思ってさ」

「そうでしたか。ありがとうございます」

「あれ? 素直だな」

「どういう事ですか?」

「いや、おまえって生意気だからさあ、『同情は止めてください』とか言われるかと思ったよ」

「ひ、酷い…。私って、そんなに生意気ですか?」

「ん…そうでもないみたいだな。悪かった」


昨日と同じく先輩と同じ電車に乗ったけど、同じ車両にうちの生徒がいないか、私は周りをキョロキョロ見渡した。

「どうした?」

先輩が屈んで私の顔を覗き込んで来た。もし私が先輩の方を向いたら、唇と唇がつくんじゃないかというぐらい、顔が近かった。