「……いない」 男の姿は見えなかった。 ……私の考え過ぎだった? 小さく溜息を吐き床に投げっぱなしの鞄を手にすると、リビングに向かい廊下を進んで行った。 ……それにしても今日はお母さん家に居るはずなのに。 鞄から携帯電話を取り出し、小さな液晶のデジタル時計を見ると18:36を示していた。 ……こんな時間に買い物にでも行ったのかな? 少し首を傾げながらリビングの扉を開いた……その瞬間、思考が止まった。