探偵になったらしい彼が事務所として使っているこの部屋は、台所だけではなくお風呂も完備されていて……人が暮らしていくには申し分のない部屋だと思う。

実際彼はこの部屋で寝泊まりしているらしく、少し古ぼけたソファーには無造作に毛布と枕が置かれていた。

しかしそんなモノより目を惹くモノが目の前にあった。

ソファーの隅にちょこんと座り、怯えた瞳で俺を見つめている少女。

彼女はブカブカのスウェットに身を包み、膝を抱えたまま俺を窺っている。

彼女の肩まで下ろした黒髪は濡れていて、恐らく雨に打たれたせいだと思う。

……柏木……瑞穂。

急に現れた俺の姿に、彼女は驚いた様に小さく口を開いた。