何故……私は走っているのだろうか。 降りしきる雨の中、漠然と考え続ける。 雨を吸った服がとても重く感じ、どんなに懸命に走っても前に進めない感覚に陥る。 ハァハァと呼吸は次第に荒くなり、心臓は壊れそうな程鼓動を速めていた。 ……気付いたら彼の家を飛び出していた。 何故そんな事をしてしまったのか……自分でも分からない。 でもただ怖くて怖くて堪らなかった。 ……彼の事が。