「……柏木…瑞穂……ね」

小さくあの女の名を呼び、少し自嘲気味に笑う。

……まさかあんなに騒がれるなんて。

……まぁ、あんな事件があれば当たり前か。

自分の間の悪さに困った様に笑うと、ニ階建のアパートの階段を上って行く女を目で捉えた。

恐らくまだ学生と思える茶髪の女は、《203》と書かれたインターフォンを押した。

ピンポーンと軽やかな電子音が響き、ゆっくりと扉が開かれる。

茶髪の女がにこやかに手を振ると、部屋の中から男女の姿が現れた。

背の高いイケメン風の男に、黒髪の少女。

「……ビ~ンゴ」

ニヤリと笑って三人に気付かれないようにそっと身を潜めると、三人は繁華街の方へと向かって歩き出した。

……あの子の学校の女の子に、彼氏の話聞いといて正解だったな。

自分の勘が珍しく当たった事に歓喜し、ニヤニヤと笑みを浮かべたまま三人のあとを追っていった。