「くっそ!来ねェ!!」 腕時計のデジタル時計は《20:45》を示している。 約束だった八時を大幅に超えているが、《奴》が姿を現す気配はなかった。 ……最悪だ。 ……完璧、騙された。 コンクリートの階段に座り、苛立ったように貧乏揺すりを続けながら、バリバリと乱暴に頭を掻いた。 ……やっぱり、柏木瑞穂が心配だ。 ……一旦、事務所に戻って…… そんな事を考え立ち上がったその時……どこからか甲高いサイレンの音が聞こえてきた。