歩く速度に合わせるように息を吸う、と、あるはずの埃っぽさよりも周囲の水気のある夜気の名残が、肺に入るのを感じた。

少し離れたところで、コンクリを蹴る音がした。





私は少し視線を巡らせる。

かつては色んなポスターなんかが貼られていたのだろう廊下の壁や、たくさんの生徒が外を眺めていたはずの、向こうが歪んで見える古い手作り硝子の窓。

霧と朝日が照らす今のここに鬱々とした雰囲気はなく、どこからか生徒や先生が教室から出てきそうな気さえしてくるが、所々割れてしまった窓ガラスの破片や風雨によって入り混んだ砂利や大量の草木の散らばる廊下は、それが絶対にありえないことを無言で諭してくるようだった。



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