「やだ、お姉ちゃんたら、謙遜してるー」


「郁美、しゃべってないで、あなたも食べなさい!」


つい怒鳴ってしまった。


郁美が今にも泣きそうなのが分かったけど、私は自分の中のイライラを、どうにもコントロール出来ずにいた。


「この肉じゃがは郁美ちゃんの手作りだよね? すごく美味しいよ。ねえ、佳奈子さん?」


「え? あ、はい。美味しいですね」


急に振られたのと、初めて香取さんから名前で呼ばれたのとで、私は慌ててしまった。


「ありがとうございます」


そう返事はしたものの、やはり郁美の声には元気がなかった。

郁美、ごめんね……


「郁美ちゃんは彼氏はいるの?」


「え? い、いませんよー」


「それは意外だなあ、こんなにチャーミングなのに」


「そんな、お世辞ばっかり…」


「いや、ほんとだって。だったら僕が立候補しようかな」


「そんな事言って、香取さんには彼女さん、いないんですか?」


香取さんのおかげで、郁美に元気が戻った。香取さんって、気遣いができて、優しい人だな……