素敵すぎる上司

「飲み会は行けません。だって、私はお酒が嫌いって事になってますから」


「好きになった、って言えばいいんじゃない? “飲まず嫌い”でしたって言えばいいだろ?」


「“飲まず嫌い”ですか? そんな言葉、聞いた事ないですよ?」


「今、俺が作ったからね。“食わず嫌い”の応用さ」


「ああ、なるほどね。でも、そんなので納得してもらえるかしら?」


「どうかなあ。でも、ウケると思うよ。突っ込む奴はいないと思うし」


「そうでしょうか……」


「間違いないね。だって、みんな渡辺さんに参加してほしいから」


「そんな、嘘ばっかり……」


「ほんとだって。渡辺さんは人気あるんだよ?」


「そんなの嘘です」


「嘘じゃないよ。君は自覚がないみたいだけど、とても評判がいいんだ。俺が君の専属宣言した時の、みんなの目は恐かったなあ。今度飲み会したら、さぞや責められるだろうな」


「そんな事、信じられません」


「じゃあ、自分で確かめたらいいよ。今度の飲み会に参加してさ」


「はあ……」


何か、うまく誘導された気がするなあ。


私も香取さんも、ワインを飲んだせいか、いつもよりおしゃべりだった。