「菓子折りぐらい受け取ればいいのに、って思ったかい?」


「え、それは……」


私は何て答えていいか分からなかった。内心、確かにそう思っていたから。


「あの中にはね、ワイロが入ってるらしいよ」


「ワイロ……? お金ですか!?」


「いや、さすがに現金ではないらしいけど、ギフト券とか図書券とか、そういうものらしい。だから俺は絶対に受け取らない」


「あっ!」


「驚いたろ?」


「香取さん、いま“俺”って言いましたね?」


「なんだ、そこかよ?」


「すみません……」


「会社では“僕”って言うようにしてるんだけど、普段のクセでつい出ちゃったんだな……」


「いいと思います、“俺”で」


「そう? じゃあ、これからはそうしようかな。渡辺さんとしゃべる時限定、という事で」


「はい」


なんかちょっと、嬉しいかも。