「姉貴、どうしたんだよ?」


「え? 何が?」


「涙……」


涼に言われるまで、私が幾筋かの涙を流していた事に気付かなかった。


「何だろうね?」


私は慌てて手の甲で涙を拭いた。


「俺が可哀相で泣いてくれたのか?」


「そ、そうよ」


「ま、そういう事にしておくか。ところで、会社は?」


「休みをもらったの」


「香取さんから?」


「うん」


拓哉さんの名前を言いたくなくて、わざと言わなかったのに……


「あの人、昨日来てくれたし、いい人みたいだな?」


「そ、そうかなあ?」


「格好はいいし、金持ちなんだろ?」


「うん、まあね」


「絶対放しちゃダメだぞ、姉貴」


「でも、私じゃ釣り合わないよ」


「何言ってんだよ。愛さえあればいいじゃねえか?」


「そんな簡単な事じゃないんだから、放っといてよ!」


つい怒鳴ってしまった。