「たったの、それだけ?」


「ああ。あれは完全にやる気がないね。『こんな小さい事件に構ってられない』って感じだったよ」


「そんな馬鹿な!」


私は腹を立てながら、蘭子さんが言った『警察は犯人を捕まえてくれません』という言葉を思い出していた。


無力感が込み上げ、悔しいけど、蘭子さんに従うほかないと観念した。


私が優先すべきは、自分の幸せではなく、涼や郁美の安全と未来だ。


涼には怪我をさせてしまったけど、私のせいで繰り返させてはいけない。


そもそも、拓哉さんとは住む世界が違っていたんだ。


短い間だったけど、楽しい夢を見せてもらえたと思えば、いいじゃない……