結局、拓哉さんとご両親の話し合いは平行線のままだった。


『とにかくパーティは中止してくれ。主役が来なくて、恥をかきたくないだろ?』


そう言い残して、私達は香取家を後にした。


帰りの車中、拓哉さんは私の肩を抱いてくれてるけど、その手にこめられた力が、拓哉さんの怒りや苛立ちを表しているようだった。


「すまなかった。両親があそこまで分からず屋とは思わなかった」


「ねえ?」


「ん?」


「私達、やっぱり無理みたいね?」


「何言ってるんだ、佳奈子まで……」


「私、自信ない。やっぱり、私達は住む世界が違い過ぎる」


「それは違うよ。俺達は何も違わない。同じ日本人じゃないか。違うとしたら、うちは多少の金があるってだけだろ?」


「多少じゃないわ」


「よし。それが気になるなら、捨てるよ」


「え?」


「香取家と縁を切る。金持ちじゃない俺じゃ嫌か?」


「そんな事はないけど、私のためにそんな事しないで?」


「じゃあ、どうすればいいんだ?」


「私は……拓哉さんの愛人でもいいです」


「な、何言ってんだよ!?」


その時、私の携帯から着信音が流れた。マナーモードに切り替えるのを忘れていたらしい。

着信音は、郁美に設定している着うただった。