「お袋に電話してみるよ」


そう言って拓哉さんは再び携帯を耳にあてた。


「もしもし、拓哉です。おやじさんは帰ってる?」

『………』

「そう? じゃあこれからそっちへ行くから」

『………』

「いや、会ってから話そうよ。あ、それから、例の彼女を連れて行くから」

『………』

「10分ぐらいで着くよ。じゃ」


「ちょっと待って。もしかして、これから拓哉さんの実家に行くの?」


「ああ。急で悪いけど」


「急過ぎるよー。心の準備が出来てないよ」


「着くまで10分ぐらいあるから、今の内に準備してくれよ」


「そんな事言われても……」