「え?」


「なに泣きそうな顔してんだよ? 俺を信じろ。さあ、帰るぞ」

「あ、ちょっと……」


私は拓哉さんに手を引かれ、強引に立たされた。


「佳奈子、がんばってね?」


「あ、うん」


何をどうがんばるのかは分からないけど、ゆかりちゃんは私を励ましてくれたんだと思う。


そのまま拓哉さんに手を引っ張られ、私達は飲み屋さんを出てしまった。


「勝手に出て来ちゃっていいの?」


「構うもんか。今はそれどころじゃない」


こんなに怒った拓哉さんは初めて見た。


「取り敢えず車を拾うよ」


拓哉さんはスッと手を上げ、空のタクシー停めた。


「さあ、乗って」


拓哉さんも私の後に乗り込み、運転手さんに私が知らない住所を告げた。