教育相談かよ。
何聞かれるんだ?



「御劔。
お前は、蒲田と付き合ってるのか?」

は?

この先生、いきなり、何聞くんだよ。
付き合ってるわけないって、返してやった。

「ライバルでもいるのか?青春だなぁ。」

オレは、レンのことを先生に話した。

「どうやって仲良くなったんだ?
その子と。
蒲田に聞いたら、御劔に聞いたほうがきちんと分かるというから。

アイツとは、結局部活やら中学の勉強、学校行事のことを話しただけだった。」


……話してやるか。

オレとハナが6歳のときの、魔導学校幼学部での出来事だ。

運動会の練習中に、職員室の先生の机から諸費が盗まれた。

たまたま風邪気味で一人、保健室にいたハナが疑われた。そして、学級裁判が開かれた。
当時のオレは必死に弁護した。
オレの父が弁護士だったので、その手腕を近くで見ていたから、力になった。

だけど、当のハナ本人が泣いてばかりで何も言えなかったから、裁判は一時中断した。
かに見えた。

「異議あり!

中断、待った!
えっと、カガク捜査官をめざしてます、宝月蓮太郎です。
一番上のおねーちゃんのマネしてみました。」

そう言って、教室のドアを開けたのが、他ならぬレンだった。
その当時は、医者のコスプレかと思うくらい白衣がブカブカで、可愛らしい印象だった。

そんな彼はオレとハナの前で指紋検出までやってのけた。
しかも足跡検出まですでに終わらせていた。

そして極めつけは、口元を緩ませて微笑んだあと、真面目な表情で言った言葉の印象が強い。

「先程、指紋検出を行った集金袋と先生の机の周辺からは……帳 奈斗《とばり ないと》さん!
あなたの指紋が発見されました!!」

思い出しても、カッコいい、と思う。
あれでレンに惚れた女、何人かいるんじゃないかと思うくらい。

彼が遅刻したことがバレないよう、裏口の門を乗り越えて入ったことまで見抜いたのだ。

奈斗は、入院しているお母さんの誕生日にケーキ買ってあげたくて、つい諸費を盗んだそう。

……お母さんをケーキで笑顔にしてあげたかったという、微笑ましい理由。
親思いの姿勢が行き過ぎた、ということで、先生に謝りに行くだけで済んだ。

裁判終了後に3人で話した。
それからだ。
レンと仲良くなったのは。

「今日みたいにレンが裁判にかけられたりしたら私が助けてあげるね!」

ハナが言った言葉に、同調するように俺も言った。
そこからは幼なじみとして、仲良くしているのだ。
今は、ライバルで、恋敵でもあるが。

先生、帳奈斗のことは聞いて来なかった。

オレも、消息を知らない。
聞かれなくてよかった。