「明美、どうして……?」

「上がらせてもらうわよ」

そう言うなり明美は靴を脱ぎ、ずかずかと部屋に入って来た。

「どうしてメールに返事くれないのよ!」

実はこのところ、頻繁に明美からメールが来ていた。
内容は、『やり直したい』とか、『会って話がしたい』とか、そんな感じ。

明美には全く未練がなかったし、綾乃さんに誤解されるような事はしたくなかったので、メールに返信すらしなかった。

明美は会社の同期で、同期仲間に有りがちな、学生のような軽い乗りで付き合い始めた。

すぐに明美がこのアパートに泊まる事が多くなり、半同棲の関係になった。

しかし一年前、明美は突然俺から去って行った。あの『平凡でつまらない』の言葉を残して。

女性から『平凡』と言われた事についてはショックだったが、明美にはあまり未練がなかった。

その後、明美に新しい恋人が出来たと聞かされても、何とも思わなかった。
つまり、明美の事を愛してはいなかった、という事だ。