支店長さんに頭を下げるお父さんの姿を想像し、胸がチクっと痛んだ。

写真をチラッと見ると、爽やかに微笑む青年の顔があった。確かに二枚目だ。

「分かったわ。お見合いしてから、断っていいんだよね?」

お父さんの顔を立てたくてそう言うと、

「もちろんだ」

と、お父さんはすぐに言ってくれたのだけど、

「何言ってるのよ。初めからそんな気持ちじゃだめよ。お付き合いして、それから決めなさい。わたしはこの人が気に入ったわ」

と、お母さんに言われてしまった。

「分かったわよ。お母さん、そんな事ばかり言ってると、お父さんがヤキモチ妬くわよ」

「何言うのよ、この子ったら…」

「あははは」

一見、明るく穏やかな家族の風景。でも、私の心が暗く淀んでいる事は、誰も知らなかった。