「なあに?」

「支店長から頼まれてな…」

お父さんは銀行に勤めている。支店長さんは家に来た事もあり、私も面識があった。

偉い人に有りがちな、ちょっと強引な感じのする人だ。

「お見合いよ」

「え、お見合い!?」

「そうなんだ。支店長の親戚の男らしいんだが、ぜひ葉子に引き合わせたいと…。やっぱり断るか?」

「お父さん、余計な事は言わないで!」

どうやらお母さんとは反対に、お父さんは私の見合いに乗り気じゃないみたい。そう言えば、昔からこういう話になると、お父さんは私に味方してくれたっけ。

要は、娘を嫁に出したくない父親、って事かもしれないけど。