「あれ、親父がいるなんて珍しいな。今日は絶好のゴルフ日和なんじゃないの?」

「おお、そうなんだよ。行きたかったなあ…」

「あなた!」

「すまん、すまん」

どういう事? 父は母に言われて出掛けるのを諦めたのだろうか…?

「どう? 新しい暮らしは、だいぶ落ち着いた?」

「ああ、まあね」

私は俊の入学式の事を思い出した。

「俊、入学式の話…」

「おお、分かったよ。
お袋、俺の入学式に来てくれないか?」

「まあ、行っていいの?」

「じゃあ、俺も行くかなあ」

「親父は遠慮してくれよ。さすがに両親揃っては恥ずかし過ぎる」

「そうか? では諦めるか…」

「私はいいと思うけどな」

「絶対ダメ! お袋だけでも恥ずかしいんだからな」

「美雪に説得されたのね?」

「ああ。泣いて訴えられた」

「泣いてないもん」

「美雪、ありがとうね」

母は申し訳なさそうに私を見た。よほど行きたかったのね…