「ただいま〜」

「あら、お帰りなさい。疲れたでしょ?」

母が出迎えてくれた。
50を過ぎた母は、小柄で身体は昔から弱い人だ。

マンション探しで来てくれた時には気付かなかったけど、だいぶ白髪が増えている。


「懐かしの我が家、って感じだなあ」

俊は玄関に入るとすぐにそう呟いた。

私にはいつの頃からか、そういう感覚はなくなっていた。帰郷の度に感じるのは、どこかの親戚の家を訪れたような感覚。

よく見知った家なのに、自分の居場所はそこにはない。そういう家になってしまった。