前に彩子からしつこく聞かれ、私に恋愛経験がない事を話していた。

「いつまでも初恋の人を想って、くよくよしちゃダメよ。前に進まなくちゃ」

初恋の人とは、恋愛経験がない理由としてでっちあげた架空の人物。
中学の時の同級生。いや、クラブの先輩だったかな?

「クラブの先輩だっけ? そんなに好きだったの? 未だに忘れられないほど」

ああ、クラブの先輩の方か。危なく嘘がばれるところだった。

「うん…忘れたいと私も思うけど、うまく行かないの。そう思えば思うほど、彼への想いが強くなっちゃうの」

この想いは本当の事。誰にも言った事のない、私だけの秘密の想い。