私は家を出る決心をした。

このままでは、私は俊に何をするか分からないと思ったから。
俊と離れて、俊を忘れたいと思った。

こっちの大学を受験したいと両親に話した。その私の初めての我が儘を、両親は聞き入れてくれた。

必死で受験勉強をし、こっちの国立大学に合格し、実家を出て一人暮らしが始まった。
実家からの援助はあったが、なるべく頼らないよう、アルバイトに精を出す毎日だった。

昨年大学を卒業し、そのままこっちで就職をした。
経済的にも、時間的にも、ようやくゆとりが出来た。

しかし、俊の事は忘れられなかった。
実家に帰った時に会う俊は、その度に大人に成長し、ますます素敵な男性になっていった。

毎回のように違う彼女を作っていたが、俊はいつも真剣じゃないと分かり、前ほどは気にならなくなった。

俊を想う事は止められないが、離れていれば耐える事は出来る。
私の想いがどんなに強くても、人にさえ知られなければ、両親を怒らせる事も、俊を困らせる事も、俊に嫌われる事もない。

なのに…

俊とひとつ屋根の下で暮らすなんて…。
俊の傍に居られるのは、正直すごく嬉しい。でも、その気持ちを隠し続けるのは、拷問のような辛さだ。