「お待たせしてすみません。帰り際に水野君が…」

「いや、俺が早過ぎたんだ。気にするな」

「私、全然神崎さんに気付かなかった」

「だろうな。で、話って何だ?」

『早速、本題ですか? 変装の話を聞きたかったなあ』

お昼に恵美ちゃんと話した事を、かいつまんで神崎さんに説明した。もちろん、日曜日のダブルデートの件も…

『怒るかな? 怒るだろうな』

「はぁ、おまえなあ…」

怒鳴られると思って身構えていたら、神崎さんから大きな溜息が聞こえた。

「会社で会わないようにして、会う時はこんな離れた場所で、変装までする俺の努力を、おまえは簡単に無駄にしてくれたってわけね?」

「ごめんなさい。でも神崎さん、恵美ちゃんに話してもいいって言ったよね? 裏の仕事については言ってないし…」