甘い秘密指令〜愛と陰謀に翻弄された純情OL〜

私は食欲がないのでお飲み物だけ戴いていた。

「裕子ちゃん?」

不意に名前を呼ばれて振り向いたら、クリーム色のドレスを着たスタイルのよい女性が立っていた。私のと同じような仮面を付けているけど、声で誰かすぐに解った。

「葉子さん!」

会社の先輩で、同期の吉田亮平君の奥さんでもある葉子さんだ。

もちろん吉田君も一緒で、早速征一さんと話をしていた。二人は兄弟のように仲がいい。

「おお、亮平も来てたのか。助かったよ…」

「え? どうかしたんですか?」

「いや、裕子の機嫌が悪くてさ…」

「へえー、おまえが怒るなんて珍しいな。どうしたんだ?」

オペラ座の怪人みたいな仮面を付けた吉田君が、長身を折るようにして私の顔を覗き込んで来た。