「コーヒー煎れるわね」

「おお、サンキュー」

「お仕事、大変そうね?」

「まあな。しかし今日できりがついた」

「え? そうなの?」

私はコーヒーを煎れる手を止めて、征一さんを振り返った。

「その話をしに来たんだ」

「そうなんだ…。じゃあこれからは会えるのね?」

「おお、寂しい思いをさせてすまなかった」


「はい、どうぞ」

征一さんの前にコーヒーカップを置き、向かい合わせに私も座った。

「どうかしら?」

「旨い。なかなかいいブレンドだ」

征一さんはコーヒーを一口飲み、ふぅっと息を吐いた。

「だいぶお疲れみたいね?」

「ああ、疲れたよ。さっきまで警察にいたんだ」

「警察!?」

「五十嵐玲子が逮捕された」

「そうなんだ…」

「あまり驚かないんだな」

「経理に横領があったのは分かってたから…」

「俺の嘘は見破られていたわけか…。すまなかった」

「ううん、いいの。私を心配してくれたんでしょ?」

「ああ。おまえを巻き込んでしまってすまない」