「麗子さんを正妻にして、裕子を愛人にする、という選択肢は俺にはありません。父さんには、あるかもしれませんが。

裕子を日陰者にはしない。堂々と陽の当たる場所で、幸せにしてあげたいんです」

「………」

静寂の中、聞こえるのは私が鼻をすする音だけ。恥ずかしい。

「ほら、泣くなよ」

征一さんがハンカチで私の涙を拭いてくれた。みんなの前でなければ、征一さんに抱き着きたいところだけど。