私は征一さんと並んでベットに腰掛けた。

「髪が生乾きじゃないか」

そう言って傍にあったタオルで私の髪をていねいに拭いてくれる。

人に頭を拭いてもらうのは、いつ以来だろう。おそらく小学校の低学年の頃、湯上がりに母親にゴシゴシ拭いてもらったのが最後だと思う。

「今日はビール飲まないの?」

「ああ、止めておくよ。なぜだと思う?」

「知らない」

「このあいだ、裕子が言った理由だよ」

「何のことかしら?」

言葉とは裏腹に、髪を撫でられるのが気持ち良くて、征一さんに抱き着きたい衝動を抑えるのが大変だった。