「征一さんの『不可解な言動』の答え?」

「そう。裕子は気付いてないんでしょうね?」

「うん、さっぱり…」

「私も気付きたくなかったなあ。こんなに悩むぐらいなら」

そう言って恵美ちゃんは溜め息をつき、遠くを見る目をした。

どう声を掛けてよいか分からず、私は黙ってぼんやりしていた。

「神崎さんは裕子のこと、とても大切に思ってるのね…」

「そうかなあ。それが答えなの?」

「う〜ん、答えの一部というところね」

それが本当ならすごく嬉しいけど、どうしてそういう答えになるのか、さっぱり分からなかった。

「よし、決めた。私が出した答えを言うわ。言うべきか言わないべきかですごく悩んだけど、言っちゃう」

「うん」

何だろう、ドキドキしてきた。

「神崎さんは嘘をついてる」

「ちょっと、恵美ちゃん。征一さんが嘘ついた事は、お昼に私が言ったじゃない?」

「違うの。神崎さんは今、嘘をついてるの。優しい嘘を…」