「お待たせしました」

「……………」

「怒ってます?」

「当たり前だ。だが、同時に安心もした」

「へ?」

「俺も君に謝る事がある。それでおあいこにしよう?」

「はい」

「約束だぞ、忘れるなよ」

車は静かに走り出した。

「征一さん」

「ん?」

「どういう心境の変化か分からないけど、『君』と呼ばれるより『おまえ』の方がいいかな、なんて」

「おお、分かった。おまえ、もしかしてMか?」

「エム?」

「とぼけるな、西野裕子」

「あなたはSね、神崎征一」

征一さんは私の頭をコツンと突つき、その手を私の股に乗せた。
私はその手に自分の手を重ね、征一さんの肩に、頭を寄せた。

私の初めての恋、報われますように…