「彼氏からだろ?」

彼氏? ああ、そうか。神崎さんは匠を私の彼氏だと、誤解してるんだよね。

いま誤解を解こうかと、一瞬考えたけどやめた。

神崎さんに彼女がいるなら私にだって…
そんな変な対抗心みたいな感情からだ。

「そうですけど、どうして…?」

「出掛けるところを奴に見られた」

ああ、そうか。神崎さんがルールミラーで見たのは匠だったんだ…

「引き返すか?」

「まさか! 大丈夫ですから」

「そうなのか? しかし帰ってからが大変だろうな」

確かに。意味は違うけど。

「プライベートに立ち入るべきではないんだが、助けが必要になったら俺を呼べ」

「はい。ありがとうございます」

いま助けて、と言ったらどうするの、神崎さん?