背中を向けて玄関を出ようとする恵美。私は慌てて恵美の腕を掴み、引き留めた。

「恵美、それは違うの。誤解しないで!」

「誤解?」

「うん。子供なの」

「子供? 出来たの?」

「な、何言ってんのよ! 説明するから、ね?」

「分かった…」

恵美はパンプスを脱いで家に上がり、キッチンの椅子に腰掛けた。ドアが閉まった寝室に、チラチラ視線を送りながら。
恵美は、このアパートに何度か来た事がある。

「はい、有紀子が好きなプリンよ」

「わあ、ありがとう」

恵美がテーブルに置いたのは、私が大好きな駅前のケーキ屋さんのプリンだった。

「で、どう誤解なのかしら?」

「うん、えっとね…」

私は昨夜の事を簡単に説明し、翔がまだ高校生だという話をした。