「もう…そういう事は言わないで。有紀子と私は親友なんだから、困った時は助け合って当たり前でしょ?」

「ありがとう」

「そろそろ出発する?」

「うん」



恵美の運転で車は走り出し、住み慣れたアパートと街が、どんどん遠ざかる。
まさかこんな形で街を去るとは、思わなかったな…

「恵美、少し回り道してもらっていい?」

「いいわよ」

「じゃあ、あそこを右に曲がって…」

翔の家の前を通ってもらった。もしかしたら、翔の姿をチラッとでも、見られるかなと思って。

でも、そんな都合よくは行かなかった。

「はぁ…」

翔の家が遠ざかると、胸がキューッと締め付けられ、溜め息がひとりでに漏れていた。