本当は言いたかった。
鎖骨から肩に広がった衿の効果で、胸のラインに自信がない子でも綺麗に女らしく着られるし、
膝上の微妙な長さが子供っぽくもあるので背伸び感がないし、
あのワンピースを着た瞬間、笑顔が似合う女の子になれるのだと伝えたかった。
細やかなデザイン面は微塵も知らないが、
知識がないからこそ凄く着てみたいと思ったワンピースだった。
もちろん静香の物も静と動があり良かったのだが、
艶やか、朗らか、自分なら左右どちらを選ぶのかと言われたら、答えは決まっていた。
なのに嫉妬をして、私情を挟んだりなんかして、加害者になった。
バカ、うざ
私うざ
最低消えろ
嫌いになった。頑張りたいのにあまりの醜さに田上結衣という女が嫌いになった。
このような場合、恋愛モノにライバル役は必須、従って静香は近藤を狙うポジションとなる。
すこぶる意地の悪さで結衣をいたぶったり罵ったり、綺麗な体を使って近藤に大胆に迫るらしいので、
視聴者や読者は主人公ガンバレとばかりに感情移入してくれるらしい。
けれども静香は展開にめりはりを付けるキャラ設定とは違う故、
結衣に素っ頓狂ないかれた嫌がらせなんかしてこないし、
引くぐらいに女を出して巧みに近藤をたらしこまない。
そう、現実味のある世界では結衣が勝手に静香に敵対心を燃やしているだけで、
結衣が悪いだけだ。
健気で純粋、無垢でちょっと天然、そんな好感度の高いヒロインに普通の女の子はなれない。
好きな人が手に入らなくて、苛々する醜さが普通の女の子だ。
だからといって、嫉妬心剥き出しに手段なんて選ばず近藤に迫る勇気もなく、
得意技はマイナス思考だ。
不特定多数に惚れられるお茶目な主人公ではなく、
過去を抱えた陰のある愛を知らない主人公でもなく、
普通に甘え、努力を放棄し、人を妬むことが趣味な主人公にぴったりなのは結衣しかいない。
「よーぺー放課後シバくから」
何気なく笑う静香が近藤の頭を後ろから叩くと、ふわふわした髪が空に持ち上がる。
彼の髪を触るのは、彼女になったら結衣がしてみたかったことだ。
知らない、知らない、狡い、見たくない。



