心~保健室の先生と私~【野いちご文庫版】

「私は学生時代、ホストの仕事をしていました。詳しくは話せませんが、今も続けています」


「えっ?」


石川の母親は少し驚いた顔をしたけれど、見た目からなんとなく想像がついていたのか、納得したような顔をした。


「4月の終わり頃、夜に愛花さんの姿を見ました。妹さんも一緒でした」


「はい」


「私服だったので高校生だとは思わず、声をかけてしまいました。そのとき、愛花さんは私がこの仕事をしてると知りました」


「そう、ですか」


「それから愛花さんは、よく保健室に来るようになりました。昼休みに来て、私をからかって教室に戻って行く」


「先生をからかうなんて……」


「ある日、愛花さんは眠りながら涙を流してました」


「えっ?」


石川の母親は、また驚いた顔をした。


「僕は何か理由があるのかと思って、聞きました。そしたら、宇宙人に連れてかれる夢を見たと、答えました。それが怖かったと」


「だから、泣いたと?」


「はい。でも絶対何か他の理由があると思い、さらに私は言いました。話したら、心が楽になるんじゃないかって」