心~保健室の先生と私~【野いちご文庫版】

「別に結婚申し込むわけじゃないんだから」


「うるさい。最初の出会いが最悪だったから、余計に緊張してんだよ」


「早く入ろうよ。寒い」


ほんの数分しか外に出ていないのに、もう手がかじかんできた。


「わかった。入る」


そう言った先生の顔は、ちょっと引きつっている。


「顔、変」


先生の顔を見て、思わず私はケラケラ笑ってしまった。


「じゃ、開けるよ?」


「ああ」


先生は、メガネを上げた。


「では、どうぞ」


私は思いっきり、玄関を開ける。


「おじゃまします」


緊張と寒さからか、声までふるえている先生。