【愛花サイド】


「愛花、ちょっといいか?」


「うん」


11月も終わりに近づいたある日曜日。


私はお父さんに呼ばれて、リビングのソファに座った。


お父さんは深いため息をついてから、こう切り出した。


「お父さん、工場辞めようと思って」


「えっ?」


それは、あまりにも突然だった。


「もう限界なんだ」


「お父さん……」


「ごめんな、愛花」


お父さんは、さびしそうに笑った。


「ほんとに……無理なの?」


「今の日本の経済状況には勝てなかったよ」