「忘れてはないさ」

さっきまで強気だった眼差しは、萎んだ花のように哀しみが滲み出ていた。

「旦那様?」

「すまなかった。
 君の人生は、これから花咲く時だな。
 今、君の心を摘んでしまったらきっと色褪せるな。
 柚希くん、君の好きなように生きろ」

 ──どうして、急に見放すような言い方するの?

 今日までの事は、全てドッキリとかじゃないでしょ!?

 そんなに全部否定しないでよ。

 ──悲しいよ。

 ……あれ?

 あたし
 矛盾している。

 結城に素っ気なくされることも、旦那様に見放されることも、どっちも悲しいよ。

 やっぱり選べない。

 ううん、選ばない。

 あたしにとって、二人のどちらが欠けても駄目なんだ。

 ──決めた!!