「アイツだけは。
 親父にだけは、譲らない」

 いつになく真剣で、吐き捨てる様に口を開いていた。

「ま、未だ答えを決めた訳じゃ──」

「お前の答えを待つ奴じゃね。
 それに、したんだろ?」

 否、あれは不可抗力でって、事故よ。

 自分に言い聞かせるも、キスをされた事実は消えない。

「大体、隙だらけなんだよ!!
 そんなに無防備を晒すんじゃねえよ」

「あたしは別に──」

 隙を作っているつもりもない。

 それに、あたしは誰かの者になったつもりもない。

 だけど、その先の言葉は出てこなかった。

「なぁ?」

突然問いかけられ上を向いた。