暫くして、ゆっくりと足音が近づいてきた。

「待たせてしまったようだな。
 貴も来ているな」

「アンタが呼んだんだろ?」

「あぁ、そうだったな。
 これから大事な事を話する」

 二人のただならぬ様子に、あたしまで緊張してきた。

「こんなところで立ち話もなんだから、二人とも中へ」

 そして、メイドを始めた事を紹介された。

 初日以来、旦那様と顔を合わせていないのに、あたしの仕事ぶりをちゃんと見ていてくれたみたい。

 なんだか、嬉しいな。

 それから、結城が実のムスコであることも。
 資産家として学校へ行かせると色々問題が起こりやすいんだって。

 だから、お母さんの姓を名乗っている。

 お金持ちさんには、あたしの理解できない悩みがあるのね。

 でも、
 呼び出されて、こんな安易な話して終わらないよね?

「実は、新しい奥さんをもらおうと思っている」

「ふーん」
「おめでとうございます」

 結城とあたしは、バラバラの言葉でハモった。

 奥様、素敵な人だったらいいな。
 紅茶と花が似合うようなさ。

 未だ見ぬ新しい奥様にを想像しながら、夢心地な気分に浸っていた。