業務に慣れないまま、三日と過ぎていったある日。

「旦那様がお呼びだよ。
 アンタ、今度は何したんだい?」

 何、って聞かれても困る。
 ……心当りが有りすぎる。

 ドキドキ、と手を胸にあてながら旦那様のいる書斎へと向かった。

 ──コンコン

 いらっしゃらないのかな。

「あれ?
 三浦じゃん。こんなところで何してんだ?」
 
 ──えっ!?
 あたし、この家に知り合いなんていない。
 そう思いながら振り返った。

 それは、予想していなかった人物。

 あたしが良く知っているクラスメイト。

「あ、この家にお手伝い……かな?
 結城こそ何してんの?」

「何って、此処俺ん家だけど?」

 ──はぁ?
 こんな見え見えの嘘つかなくたっていいじゃない。

 此処は、資産家の豪邸“鳳様”の家なのよ!

 それに、一度だってこの屋敷内ですれ違ったことすらないんだよ。

 こんないい加減な奴は放っておいて、暫く廊下の壁に沿って旦那様を待つことにした。