「返して!!」

「へぇ…。
 新曲じゃねえか

 アンタ、あのメンバーの何?」

何って……?

ファンの一人で、
マネージャーみたいだけど、違う。

メンバーに入れてはもらったけど、まだお荷物だし

誰かの彼女にもなっていない。
あたし──


「答えられねえなら、この楽譜いらないよな?

 音楽をこよなく愛する俺らに演奏してもらったほうが譜面も喜んでるよ」

──嘘!!
音楽を愛している雰囲気なんて、欠片も感じないじゃない。

震える心を抑え、真っ直ぐ見返した。

「あたしが彼らと、どう関わろと、貴方達には関係のないことでしょ?」

「──そうだな
 俺らと一緒に演奏するっていうんなら、この譜面は返してやるぜ」

──どうしよ。

瞳を閉じ一瞬の迷いを選択した。

この曲は他の誰かが唄ってはいけない。

この楽譜が守れるなら──

「わかりました」

「聞き分けいいね。
 返してやる。

 渡したら、サッサと戻ってくるんだ、いいな!!」

有無を言わさない、見えない手錠に縛られ、あたしは彼らの元へと駆けていった。