只のお祭りライブなら、あたしも参加出来る。

だけど、今度行われるのは、
ライブコンテスト。

だから、
あたしに今出来ることは。

彼らを、GRAPEを精一杯応援すること。

キーボードを弾くことじゃない。

それでも、約束だから練習には行かなくちゃね。

昨日渡された楽譜に目を通し、みんなが演奏したサンプルをi-podから聴き、電車を乗り継いだ。

集合場所が目の中に飛び込んできて、あたしも心が緩んだ。

そして、曲のリズムを理解するに集中しすぎて、近付いてきた気配に気付かないでいた。

「姉ちゃん、音楽やるんだ?」

えっ!?
──誰!?

いつの間にか、数人の厳つい男の人達が、あたしを取り囲んでいた。


「俺らもバンドやってるんだけど、良かったらいれてやるよ」

「結構です」

「気ぃ強い女は好きだね」

「あの、あたし──」

「おい、コイツあの(GRAPE)メンバーみたいだぞ!」

この人達と関わっちゃいけない。

そう思った時には既に遅く、
持っていた楽譜がスッと手から消えていた。